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佐久間裕幸の著作

経営の話

niftyserveに連載した経営に関する話

原価計算の話

「メーカーが株式公開をするには原価計算制度の整備がネックになることが多い」、これは公認会計士が、株式公開を希望する企業に初めて伺ったときによくする話です。そして社長が「いや、当社の場合、既にやっていますよ」という返事が返ることもよくある話で、後日原価計算の内容を会計士が調べるとやはり整備が必要だったりするのもまたよくある話です。


要するに「原価計算」という言葉の範囲が広く、また人によって異なる意味に用いたり、重点をおいたりしているのです。


「原価計算制度」という言い方をする場合、以下の5つの目的を合わせ持っているのです。


(1) 財務諸表作成目的

毎月末、年度末の製品、仕掛品の原価を算定し、財政状態ならびに損益を算定するための原価を算定する。また製品種類別の売上原価の算定などに必要な原価情報を提供する。


(2) 価格計算目的

新製品の製造価格を事前計算(見積計算)して販売価格を算定する。


(3) 原価管理目的

原価発生の実際額と標準とを比較して、差異の原因を分析し、経営管理者の各階層に対して必要な原価資料を提供する。


(4) 予算管理目的

予算の編成並びに予算統制のために必要な原価資料を提供する。


(5) 経営基本計画目的

経営立地、生産設備など経営構造に関する事項について経営意思を決定するための随時的な決定への資料を提供する。


株式公開する上で原価計算が未整備であると言われる企業でも2の価格計算目的での原価計算は行い、それをもとに年度末の製品原価も行っています。それゆえ1の財務諸表作成目的の原価計算も実施していると経営者は考えるわけです。


ところが、株式公開を目指す企業に期待されるのは、年度初めに定めた予算に基づく原価見積により計算した原価と実際に発生した原価 とを比較して、その原因を明らかにできること、また見積の作成において見込んだ製造の能率や操業度と実際との比較をして原因を分析すること、そして実際に発生した原価で製品や仕掛品の原価を算定することなのです。


こうした原価計算を行うためには、帳簿における実際の購入金額を反映した原価を算定する必要があり、「予定価格×数量」で算出する原価計算に比べてはるかに手数が増え、部門間の資料のやり取りが必要になります。


株式公開の準備においては原価計算制度の整備のお手伝いを公認会計士が担当します。この場合、一定の期間、週に一度は会社に伺うなど相当の手数をかけることになります。知識や経験だけでなく会社の多くの部門の人の協力を得られるような全人格的なエネルギーの投下を求められます。しかしながら、その会社の製造過程を教えてもらうことから会社の製品についての深い知識を得られ、また会社の多くの人達と交流することができるため、非常に楽しい作業でもあります。会社の人達から「問題点が見えるようになった」と言われるのが、何よりの喜びです。

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