経営の話
niftyserveに連載した経営に関する話
倒産の話
やはり景気の影響であろうか、倒産の記事が目に付きます。ところで一口に「倒産」と言っても、具体的にはいろいろな内容があり、また法律用語ではありません。中小企業信用保険法とか中小企業倒産防止共済法といった法律のなかで「倒産」という言葉が出てきますが、いろいろな状況を称して「倒産」なので すね。
新聞などで「会社更生法の申請を出し『実質的に倒産』した」などという言い回しがされるのはそのためです。
法律的な倒産としては、整理、和議、破産、会社更生、特別精算があり、また実質的な倒産としては銀行取引停止(手形交換の停止)や任意の整理があります。
このように見てみると同じ「会社を潰す」のでもいろいろな方法があることに気がつかれるでしょう。しかも「倒産」と言っても会社を再建する方向での倒産もあれば、会社を消滅させる方向での倒産もあります。またこうした法律にしたがった倒産のほかに銀行の管理下に入るとか夜逃げをするなどの法律に定めのない手法もあります。
再建型 | 和議(和議法) 会社更正(会社更生法) 整理(商法) |
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消滅型 | 破産(破産法) 特別精算(商法) |
( )内は、根拠法令
このようにいろいろな倒産があるとなれば、会社の経営が苦しくなったときに 経営者としてはどのような倒産手続をすべきかを慎重に検討する必要が出てくることになります。会社を設立するときに税理士や司法書士に相談する人は多く見 かけますが、倒産するときに専門家に相談することは希なようです。将来の見込みのないままにズルズルと営業を続け、資金が苦しくなると知人や取引先に資金 の融通を頼み、さらには手形割引業者などに高利のお金を借りて、どうにも行かなくなったところで夜逃げをする。これでは従業員も救われなければ、やがて本人が出直そうとしたときにも誰も協力してはくれないでしょう。
これに反して、まれにすべての債務を銀行に集約した時点で不渡りを出すような見事な倒産を見ることがあります。時には家屋敷も他人の手に渡ることなく、会社も銀行の管理下で業務を続けられる場合まであります。こういう場合の多くは後ろで指揮を取るアドバイサーがいるようです。株式会社、有限会社の有限責任を上手に利用しているわけです。
会社を作るときには資金もあれば、将来への見通しもあります。こんな良い状態のときにでも専門家を利用するのですから、会社の苦しい場面で専門家を利用しない手はありません。身に詰まされながら読んでいる人のいないことを祈っております。