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佐久間裕幸の著作

経営の話

niftyserveに連載した経営に関する話

多角化への誘惑

そこそこの規模の会社を経営している経営者にとって、今の本業だけに頼らず、もう1つ経営の柱になる業務分野を持ちたいという気持ちは、なかなか捨 て難い欲望のようです。これは、景気や主要な取引先との関係に左右されない強固な経営基盤を作りたいという願いに基づくものと思われます。


しかし、経営学などの本の記すところや経営コンサルタントによれば、本業と全く異なる事業分野への進出は危険であり、すべきでないとされており、何らかの形で本業のノウハウや技術力が生かせる分野でなければ成功しないといわれています。


理由として会社にはそれなりの歴史や直面する市場などから醸成された経営風土というものがあり、容易には新しい事業分野に適応でき ないということが挙げられます。また新しい事業といっても容易に利益が上がるような事業であれば、多くのコンペティターが参入してくるわけであり、また容易に利益が上がらないような事業であれば、多角化の結果として経営の柱にまで事業を育てるのは非常に困難なわけです。それゆえ、本業との何らかの関連性による差別化や独自の付加価値が必要になるのでしょう。


このような話は、誠に有名な話でこのFBMANに来られる方々なら多くの方々が御存知だと思います。しかし私がここで問題にしたいのはそれほど有名な「多角化はいけない」という命題に反する意思決定をする経営者が後を絶たないのは何故か、ということです。
これについて私は「恐れ」が関わっているのではないかと考えています。すなわち、そこそこ会社が成長すると、そこから得られる自らの報酬や社会的地位、従業員への責任なども大きくなります。これが何らかの市場構造の変化や社会の需要構造の変化などから失われることへの恐れがあるのではないでしょうか。それ ゆえもうひとつ経営の柱を持って、たとえどちらかの事業を縮小せざるをえなくなっても、少なくとも会社は半分の規模になるだけで存続はできる、そういう安定性への欲求が多角化へと経営者を走らせるように思うのです。


しかし、経営の柱になるような事業など簡単にはできません。ましてや最初の事業は、社長自身が決死の覚悟で裸一貫から始めて必死になって育ててきたはずです。その時のような迫力で多角化に没入できる経営者はまずいないでしょう。
ある事業に自らを投じるだけの確信をもって始めた最初の事業と「恐れ」から参入する多角化事業。結果に大きな違いが出るのは言うまでもありません。


今回は私見に基づいた話になってしまいました。ご異論もあるかもしれません。
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