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経営の話

niftyserveに連載した経営に関する話

予算の話

公認会計士が初めての会社に伺って経費や販売費の帳簿を見たとき、支出がとんでもない科目で費用処理されているのに出会うことがあります。たとえば例えば広告宣伝費になるような支出が消耗品費で計上されていたりするのです。
「ここの経理はどういうセンスをしているんだ?」とまずは呆れ、それから「もしや?」と思って次のように質問してみます。


「こちらの会社は、かなりきちんとした予算管理をなされていますか?」


すると経理の人が「そうですね、というか、かなりガチガチの・・・」という返事が返ってくる。つまりある費目で予算を超過してしまうとそれ以上の支出ができないために、予算に余裕のある他の費目で計上してしまうということなのです。


これは、予算制度の悪い面が出ている、というか、運用の仕方を誤っている例と言えないでしょうか。本来予算制度は、翌年の会社の活 動の内容を規定して、組織としての目標を達成すると同時に、それに伴い予算編成時に設定した利益水準に到達するために実施されているはずです。毎月予算と 実績を比較して、予実の分析を行うことで、企業を巡る環境の予想とのギャップや予期せぬ変化をキャッチすることもできます。そもそも1年先をきちんと読め たらバブルの崩壊などあり得ず、崩壊しても損失を抱えないで済む企業はもっとあったはずです。従って予算からブレない会社などないわけです。


そういうことは、みなわかっていながら、予算を超過する支出は認めない、そういう予算制度の運用をするから予算の流用や計上費目の 振替えなど小手先の逃げが出るのです。予算を超えても支出しなければならない場合には、それなりの補正予算の編成なり、稟議書による支出の決裁が認められ なければなりません。獲得済みの予算を流用するということは、予算編成時に実施しようとしていた企業行動を取り止めて別の行動をするということです。会社 として決めた活動をしないのも悪いことだし、それで浮いているお金を会社として決めていない行動のために支出するのも悪いことです。しかし、企業の実態と しては、そういうことは生じるはずなのです。ですから、予算にない支出は一切認めないという制度は、予算制度の悪しき運用だといえます。


生きた予算制度を実施されている会社はどれくらいあるのでしょうか。我が社はオーナー企業だから社長の鶴の一声で予算など無視され てしまう・・・、などという会社は案外血の通った予算制度を実施していると言えるのかもしれません。ただ社長の鶴の一声でなく、稟議書や取締役会で決定さ れるのが一番良いのですが。


予算制度については、予算の編成方法、運用方法、予算実績の分析と活用などを詳細に触れた書物を見たことがありません。やはり個々 の会社のノウハウに近いものがあって、アンケートなどでも本当のところの集計ができないのかもしれません。もし、この会議室で様々な実例を紹介していただ けたら幸いです。

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