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佐久間裕幸の著作

経営の話

niftyserveに連載した経営に関する話

従業員に染み付いた体質

今回の話は、経営者の方々は十分承知している問題かもしれません。むしろこれから転職したりする人のためになる話と思って読んでもらってもかまいません。


成長途上の中小企業では、自分の会社内に幹部候補になる人がいないため(または、不足しているため)、外部に幹部候補を求めています。反対に金融機関やメーカーなどは人員整理の一環として積極的に出向及び転籍者の斡旋をし ています。


こうした動きは、本人の意思に関わらず出向転籍させられる本人にとってはたいへんなことですが、基本的には成長力を失った会社から成長力のある会社へ人的資源が移転することなので、社会的には望ましいことだと思われます。


そんな形で幹部候補者を受け入れた中小企業で見かけるのが、受け入れ者の会社の体質への不適合です。大きな会社で育った人は、組織の固まった組織内での経験が染み付き、常にそうした行動をとる傾向が見られます。


例えば、幹部としての機能自体への誤解があります。大企業では、組織自体が大きいため、組織間の調整が重要であり、その分会議が多くなります。また、職務権限や内部牽制が明確になっているために、書類を審査したり、ハンコを押す仕事が無視できない業務になっています。
しかしながら、中小企業では、組織間の調整はそれほど多くなく、重要な調整は社長自身の仲介や指示で行われます。したがって、中小企業の幹部は、自ら業務 の一部に積極的に介入して仕事の仕方を部下に見せながら、かつリーダーとして部門を掌握しなければな りません。少なくとも朝、会社に出てきてお茶を飲みながら業界紙をひろげる・・・という優雅な生活はできません。


またトラブルが生じたときの対応も異なります。ある社内の業務改善の仕事がうまく進まなかったりする場合、大企業では仕事自体の権限がその部門に割り振られたものですから、部門長自身がトラブルの終息まで責任を持って仕事に当たります。
ところが中小企業では、場合によっては社長自身が乗り出してきて、社長の指示が出たり、場合によっては直轄事項になったりします。すなわち特定の業務の部 門への割り当てや職務分掌は、固定的ではないのです。ある意味では朝令暮改ですが、フレキシブルな対応と見ることもできます。組織の運営方法自体が違うわ けです。そして社長が乗り出したからといって、その部門長が無能だとされたのではありません。


そのため、中小企業の経営者は、各部門の仕事が順調に進んでいても不調であっても、すべて報告することを求めます。不調であっても納得 できる理由で不調であれば、別に部門長の責任を問うこともありません。もちろん何故順調に進まないのかについての理由は厳しく問われると思いますが、例え 不調の原因が部門長にあったとしても、不調であることを報告しないことの方が重大な問題行為なのです。


中小企業にとって、大組織における稟議書その他に代表される組織的な運営や書類の書き方などのノウハウを持った人は、たいへん貴重な財 産です。しかし、中小企業ならではの組織原理や風土というものを理解して、自らのノウハウと融合させる努力をしてくれないと、社長としては能力は認めつつ も切捨てるという判断をせざるを得ないと思われます。ただ、経営者の側もそういう原理に気づくまでの時間的な猶予は認めてあげて欲しいと思います。会社の 仕事を理解して、風土を理解するだけの時間を与え、それでも柔軟な変化を見せなかった時には速やかに切捨てる、そういう我慢と決断のタイミングが重要かと 考えます。

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