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経営の話

niftyserveに連載した経営に関する話

粉飾決算の話

世間はどこを見ても不況、不況です。そんな中で取引先や関連企業の決算書を見て、その会社の状況を見ることは重要です。ただし、中小企業の決算書というのは、得てして当てにならないもので、こんなご時世だと多分に決算の粉飾があったりします。


公認会計士や税理士も中小企業の決算書をよく見る職業の1つだと思いますが、今年のような状況で以下のような損益計算書を見たら、それだけで「ああ、2千万円くらいは、いじっているかもしれない・・・」などと思います。

損益計算書
科目 94/3 95/3
売上高 1,223,451 1,056,387
売上原価 991,758 840,673
売上総利益 231,693 215,714
販売費一般管理費 183,549 178,398
営業利益 48,144 37,316
営業外損益 28,579 24,650
税引前利益 19,565 12,666
法人税等 11,708 8,364
当期利益 7,857 4,302

(単位:千円)


理由は、簡単です。これだけ景気が落ち込んでいる環境で、前年が8百万円弱の利益の会社が今年同じ位の利益がでるはずがないからです。現に売上高は 13%以上落ち込んでいます。それなのに売上総利益はあまり落ちていない。この景気で売値の低下より仕入値の低下の方が大きい会社は少ない。まして製造業 なら売上の減少は、操業度の低下により原価率の上昇を招く。すなわち、普通なら粗利益率が上昇するわけはない。ということは、仕入高や期末の在庫高を調整 して利益を捻り出しているのではないか・・・?と推測するわけです。


この会社がもし前年と同じ利益率で販売したなら売上総利益は、ちょうど2億円くらいになります。若干利益率が落ちればそれを割り込むわけで、そうすると約2千万円の利益を粉飾しているのではという最初の印象が形成されるわけです。


そもそも当期利益が百万円台というのが「いかにも赤字を避けた」という感じです。銀行から借入れがある以上赤字にはできないという事情から多くの企業でこうしたやりくりが行われるわけです。


「銀行の人は、気づかないのか?」と思われることでしょう。もちろん気づいていると思います。彼らも決算書を見るプロのはずですか ら。それでも黙って決算書を受けとって融資を継続してくれるわけです。なぜなら、彼らの審査基準としては、黒字か赤字かは重大な問題であって、融資担当者 としては会社の状況は普段訪問時に把握しているから、すぐに倒産するわけはないくらいの心証は得ています。となると、融資は継続したい。じゃあ、嘘でも何 でもいいから黒字の決算書を出してくれた方が審査を通しやすい・・・という事情になっているのだと 想像されます。


別に中小企業の粉飾決算を奨励するつもりはありませんが、やはりタテマエとホンネというのはあるもので、銀行の貸しやすい決算書を作ることはそれなりに必然性があるのだと考えています。


ちなみに高景気の時には、上記の決算書の94年と95年を入れ換えたようなものが出てくるかもしれません。その時には、利益を圧縮するような操作をしている可能性がありますね。

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