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佐久間裕幸の著作

経営の話

niftyserveに連載した経営に関する話

中国への進出

NICSへの進出というのが一時流行っていました。そして近年私の周辺でよくみかけるのが中国への進出です。生産工場の移転先として、かつて韓国、台湾等が主要な進出場所として選ばれていた時代がありました。しかしこうした国の工業化と共に賃金水準も上昇し、労働集約的工場としては魅力が無くなったということです。またシンガポールを代表とするNICSもずいぶん注目されました。 これに対して中国本土の経済特別区他への進出が目立ってきたわけです。


中国では労働力の供給としては非常に恵まれた条件にあり、香港に接したシンセン(すみません、変換しません)では、その周辺地域だけでなく、中国全土から労働者が集まってきています。とはいえ鉄道を乗り継いで4日間などというような遠方から出てくる人もいるため、正月休暇などは少なくとも10日は必要だというような事情もあるようですが。賃金水準は月給数万円で十分とのことです。


しかし問題がないわけではありません。まず中国側としても外資の導入が目的 の1つなのでしょうから、資金が流出しないような規制が公式、非公式に存在しています。中国での子会社設立に当り、会社の定款や合弁契約を作成する際、当 事者での協議で十分議論して対応を考えても、いざ設立前に政府の認可を求めるといろいろと修正しないと会社設立を認めてもらえない場合もあるようです。利益が出たとしても配当として資金を日本に還元するのは困難なようです。中国側の立場になれば当然のことなのでしょうけど。


あるいは本社の誰を中国子会社の経営者として派遣するかも重要な問題です。 経理が不透明になって横領などの不正が生じては困るし、また公開企業であれば、連結決算に対応するために日本の会計制度に即した経理を行わなければなりませ ん。従って経理をある程度理解していて、かつ異国の人々と十分な友好関係を築くことができて、生産や販売も含めて全社的な視野からのジャッジができる人材 が求められます。そのような人があなたの会社にいるでしょうか。もしいたとしても、中小企業であれば、取締役にでも据えて本社の体制の確立に尽力してもら いたいくらいの貴重な人材です。それを海外に派遣したのでは、本社の管理面が手薄になってしまう恐れもあります。


最近の新聞ではキヤノンやミツミ電機といった上場大手企業の中国子会社でも 労働争議が起きるなど、外国子会社の管理には相当な負担がかかります。一般に生産子会社の設立というと、生産コストの面からのメリットに目が向きがちです。 いまいちど進出先の法律等社会制度や自社の経営力を総合的に見直してから海外進出の意思決定を行う必要があります。


最近でも、増値税の還付について政府の取扱いが前触れなく変わったりして、 中国の制度には理解できない部分があります。
そういうリスクも承知の上で、そこに適応できたとき、はじめて「国際化」と言えるのかもしれません。(H7.3.6)

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