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佐久間裕幸の著作

経営の話

niftyserveに連載した経営に関する話

ダウンサイジングと経営改革

これは、一昨年の8月に書いた文章に手を加えたものですが、いまだに内容  は死んでいないようなので、アップいたします。

「ダウンサイジング」というのは、いまやある種の流行語になっている感じですね。ただし今日本で語られているダウンサイジングの多くは「大型コン ピュータでできる仕事がワークステーションなどをLANで繋げるとできてしまうらしい、それなら、その方が安くていいじゃないか」というニュアンスが強い ように思われます。


しかし本来のダウンサイジングは、そういう利用するハードウェアの話だけではなく、経営組織自体を変革するものという側面をもっている ようです。あくまでハードウェアにこだわった言い方をするならダウンサイジングは、エンドユーザーコンピューティングを伴っていると考えられます。少なく ともそういう方向性でコンサルティングを受けて成功いる例があります。


例えば保険会社の保険契約の申し込みから契約書の発行までの業務を考えます。仕事の流れは大雑把にはこんな感じでしょうか。


  1. [営業部]
    申込書を受取り、内容をチェックして、必要事項を記入。上司の承認を得る。
  2. [審査部]
    審査部の観点から内容をチェックして、過去のブラックリストなどとも照合。上司の承認を得る。
  3. [医療部]
    健康状態の申告書についてチェックして契約を受けるか判断する。上司の承認を得る。
  4. [事務部]
    OKとなった契約書を入力する。出力結果についてチェックして、必要部署に回付。
  5. [営業部]
    出力された契約書を契約者に発送。

この流れで、各部に担当者、事務処理をする職員(いわゆる女の子)、課長、部長がいて、この間の書類の流れだけでかなりの時間を消費します。さらに部署間 の文書の移動(社内メールですね)で時間を消費します。これだと1から5までで2~4週間を要していたのだそうです。


ダウンサイジング、すなわち各部署にLANでつながったパソコンを置くとデータが部署間で相互利用できますから、最初の段階で契約申込書を電子データにしてしまえば、文書の移動時間はゼロになります。


また各自が端末を持ちデータベースにアクセスできるので、システムにチェックの機能を持たせるほか十分な情報を提供して上げることで担当者 ベースに判断能力を持たせることができます。職位に伴う情報の独占という事実を壊す ことで部長からヒラまでの階層を減らすことができます。さらに1~3までの流れの審査も各人が情報を持てれば1人で行うことができます。そうなると組織の 横の拡がりも縮小できます。


つまり組織自体のダウンサイジングが達成でき、この例の保険会社では3~7日で契約書が発行できるようになったそうです。これは、経営の変革 にほかならず、システム部門が主導で行うべきものではないことになります。従来の組織においては情報を持てないような末端の構成員にまである程度の情報を 持たせることで、一定の枠内で判断能力を向上させて、多くの処理を少数の人員で実施してしまうように経営自体を変えることにほかならないからです。


その意味で経営の再構築を支える手法の1つとしてダウンサイジングを捉えることもできるということなのです。つまりリエンジニアリングです ね。こういう動きが日本でも本格化してくるとハンコだけ押して給料をもらっている管理職というものが排除されるような流れが生じるかもしれません。これか らも注意をしておきたい動向だと思います。


ただ、こういう動きを阻害する最大の要因は、こういう効率化を図ると管理職の解雇をせざるを得なくなる、すなわちもっと人余りになってしまうという事だと思います。

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