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ベンチャー企業の経営管理

Ⅳ 破綻を起こさないためのシステム(仕組み)の構築

この破綻を起こさせないために、どうしたらいいんだというのが本日の本来の課題です。私はこれだけひどい破綻の例を見ましたということだけ話して終 わったのではしょうがありませんので、以下、その話をしたいと思います。ただしこれも私の経験則であり、またすべての破綻を私が解決したわけではないとい う部分がありますので、とりあえず私はこんな処方箋を切ってみましたが、みなさんはどうですかという部分もあります。話が終わった後質疑応答を少し受け て、懇親会その他のフリートークで話ができたらと思っていますが、とりあえず私の処方箋を見てくださいということでお話させていただきます。



Ⅳ- 1 組織体制の整備と内部統制

何はともあれ、組織としての業務への移行が大事ではないかと思います。そして、その組織化の中に、各業務において必要な経営管理機能と内部統制シス テムがビルトインされていなければいけない。しかもその仕組みを作るだけでなく、その会社の組織の中で回さなければいけないわけですから、従業員の理解を 促して、経営者にももう少し権限手放してよという形で説得していく啓蒙活動が必要です。従業員が育ってくれなければ、あなたは課長のままねということで部 長として有能な人材を引っ張ってくるということも必要でしょう。
具体的にはどういうことかというと、それをTo Do Listという形で書きましたが、まず組織図を作ってみようじゃないか、ということです。ここまではなんとか中小企業でもできていますが、人に仕事がつく のではない、組織に人がつくんですよということです。


<To Do List>

  • 組織図の作成(人に仕事がつくのではなく、組織に人がつく)
  • 職務分掌の実現
  • 職務権限の委譲
  • 各部門の経営管理における課題の明確化
  • 業務の定型化
  • 業務フローチャートの作成
  • 業務マニュアルの作成
  • ファイリングの整備
  • 現場を見る(ような管理職を置く)
  • 管理資料を見る(ような管理職を置く)
  • 上記のような動きを推進し、部下に啓蒙する管理職を育成する(調達する)。
  • でも、社長もちゃんと仕事する(公開準備のさなかロータリークラブに出席したり、ゴルフの回数が減らない会社がある。公開するまではゴルフを絶つ、公開するまではベンツは買わない…などの自制力が必要)。

某飲食店で、商標や意匠権の管理を担当していた人が資材物流部門に回りましたが、その後も相変わらずその人が商標関係を担当してい るんです。社内に商標権の知識を持っているのがその人しかいないということで、職務権限規定を作るとどうしても物流部に実用新案権・意匠権・商標権の登録 管理の仕事が入ってしまいます。これなんとかしてくれよという話はしていたのですが、ほかにいないことにはしょうがない。かといって、それだけのために専 属の人を雇うほどの仕事でもない。組織図でそこの支障を来さないためには、兼任の規定を置くしかないのかと思いました。第2店頭をやるなら、東証にしても 徐々に企業の小規模化への対応が進んできているような印象を持っていますので、ある程度の兼任というのは許されるのだろうかというイメージはありますが、 とにかく実体に応じつつも組織というものを作ったほうがいいでしょう。組織の上で、職務分掌や職務権限をきちんと乗せていくことです。


売上高10億を超えていながら1万円以上社長承認、という会社は結構多いです。公開準備で我々が行って、監査法人というのはこうい うふうにしてみなさんの会社を公開まで持っていくんですというような話を説明している時に、「たとえば、社長が1万円以上全部チェックしている会社があり ますが、ハンコ押すのが社長の仕事じゃないですよね」なんて言うと、社長は思わず頷いたりして、もしかして当社もそうですかと聞くと、そうなんですよと 言ったりすることがあります。社長が権限を委譲することに納得していない段階で、うっかりその話をするとやばいなあというのがあったりするほど多いです。 それをなんとか切り離していく。逆に、有能な部下がいないと思っているために社長が全部承認していることもありますので、人が先か仕組みが先かという部分 はありますが、とにかくやらなければいけない。


それから、各部門の経営管理における課題の明確化があります。資材部門であれば、絶対に滞留在庫を作ってはいけないという課題が最 優先ならば、それが経営管理の課題です。これが組織なり分掌なり業務の定型化の中に組み込まれなければいけない。課題の明確化が必要です。そのための業務 の定型化をして、定型化した後に人が変わってもちゃんと残るようにフローチャートやマニュアルを作って、書類等の共有化をしなくてはいけないですから、 ファイリングの整理をしないといけないでしょう。それから、それがうまく動いているかどうか現場を見る、あるいは現場を見るような管理者を置く。管理資料 を作りっぱなしではなく、見るような管理者が必要です。在庫一覧表や在庫年齢表を作れと言っても、古い在庫がどれだけあるかを管理職が見なければそれまで です。やはりそれを見るような管理者を置かなければいけないでしょう。


さらにそうやっていきつつ、社長もちゃんと社長なりに仕事してもらわなければなりません。いろいろな会社を見てきた中でも、ロータ リークラブにしっかり欠かさず出席する社長がいました。悪いことにライオンズクラブやロータリークラブは、欠席するとペナルティがつく仕組みになっていま す。そのため、あれは公開を考えない中堅オーナー企業のための同好会だと思ってもらわないといけませんので、場合によってはロータリークラブは退会するん だぐらいのつもりで公開に踏み出してほしいですが、ロータリークラブは出るわ、ゴルフの回数は減らないわ、我々が監査で行った段階ですでにベンツ買ってる わという会社があります。私が見ていた事例で、店頭出て2部上場まで行った会社の社長は、「いや、公開するまではベンツ買わないんだ」と言っておられまし た。周りから言われるんですね、もう店頭にも出たことだし、社長さんぐらいだったらなんでマークⅡに乗っているんですか、という認識を持たれる方もいらっ しゃいますが、この社長は「2部行くまでは買わない」。そういう仕組みを作らないといけないと私は思っています。


では、そのための支援システムはどうするのか。会社に任せておいたら破綻するわけですね。そのための対策を4つほど挙げたのが以下になります。



Ⅳ- 2 外部の力を借りるその1・監査法人

外部の力を借りる。私がこういうことに気がついたのと同じように、監査法人というのは経理の担当をする傍ら、証券会社の引受部の方は会社の業務全般 の方から入ってこられるということで、経理の破綻の臭いというのは監査法人の人間が最初に気づくのかなあと思います。それで、監査法人が最初に助言して、 破綻しないように前もってどんどんアドバイスしていったらいいのではないかということが一つありますが、監査法人の内部的な問題、特に大手監査法人の問題 として、日程がすごくタイトだということがあります。


上場企業ですと、月曜日から金曜日までの5日間、または翌週まで含めて2週間、あるいは中堅企業・中小企業ですと、月・火・水行っ て木・金は別の会社という感じで、平日のビジネスタイムはびっしり日程で埋まっています。そのため、何か気づいた点があって、これは急遽なんとかしないと いかんということで動こうと思ったら、夜を使うか土曜日を使うかしかないということになりますと、会社の人に残業してもらって何かするか、あるいは土曜日 出てもらうような形で動かなくてはならない。しかし、有能な会計士ともなれば仕事も集まってきますので、夜は夜で監査法人の事務所に戻ってやらなくてはな らない仕事もある、土曜日もあるという中で、社長や経理部長に、こういう問題ありますよね、なんとかしなきゃいかんと思うんですよ、というところまで行っ て、処方箋切るところまでが動けない、というのが実態なのかという気がします。あとは、船橋に住んでいる会計士が藤沢のクライアントを担当し、監査法人の 事務所が新宿にあるとなると、物理的に藤沢のクライアントに注力することが難しくなってしまうという問題もあるかもしれません。


とにかくコンビニエンスストアみたいに働かないとクライアントへのサービスができないとなると、「外部の力を借りるその1・監査法 人」というのは、まれな場合でないとうまく機能しないのかとも思います。人に依存するわけです。いい担当者に当たればうまくいく、そうでないと破綻する。



Ⅳ- 3 外部の力を借りるその2・コンサルタント

そうならないようにするには、コンサルタントを専門で入れたらいいのだろうかというわけですが、最初のほうで話したように、この分野のコンサルタントって どれぐらいいらっしゃるんでしょうか。ボストンコンサルティングとか、ゼネラルコンサルティングをやられる会社というのは著名どころいっぱいありますし、 システムコンサルティングをやられるところもありますが、業務の組織化やファイリングといった地道な世界まで含めてのコンサルタントというのは、どれだけ いるのだろうか。そういう人がいるなら私も知り合いになって、かかわるクライアントに紹介したいと思うわけですが、私は今のところ存じ上げない。それくら い少ないんじゃないかと思っています。



Ⅳ- 4 外部の力を借りるその3・個人会計士・税理士

たいていの企業に顧問税理士がいます。では、その人たちが会社の成長に応じて企業を指導してくれたらいいのではないかと思うわけです。税理士の業界 でもコンピューターが普及して、帳簿の作成アウトソーシングだけでは業界の未来はないということで、コンサルティングに進出しましょうという話も出ていま すが、私ともども会計士は会計士のプロなんですね。監査のプロ。そして、税理士というのは税務申告書を作ったり帳簿を代わりに作ってあげるプロです。コン サルタントとしての経験・訓練を受けていない人間がそう簡単にできるものではありません。私も監査法人では、公開準備に向けての支援をいたしますというの を謳い文句にしていましたし、実際そう動いてきましたから、内心ではコンサルタントとしての経験を、1年でも2年でもどこかで積んでいたら違うのではない かと思いつつ、原価計算システムの導入などいろいろやらせていただいてきました。そういった、コンサルタントとしての認識を持って公開準備をやっている経 験豊富な会計士が独立して税理士になった場合に、そういう人たちが会社を指導していく。
逆に、監査法人が入るほどではないが、そろそろ公開だなとか、かなりアーリーステージでベンチャーキャピタルが投資しているという場合に、個人の会計士を 税務顧問という形で導入しておくといいかもしれません。そういうこともやってほしいということで、やや高めの顧問料を設定する。コンサルティング込みとい う形でいくのはアリではないかなと、私もこういった方向での展開はあるかなと思っています。監査法人のメンバーとして監査をするというのもありますが、そ れ以前の段階で何かお手伝いできないかなということをちょっと考えたりもしています。


とはいえ、それぞれのプロを導入し、経験豊富な人に有効な助言を貰おうと思うと、時間当たり3万、半日では10万、1日来たら十数 万と、ストックオプションその他も含めて成功報酬を導入するかどうかは別として、流せばそれぐらいはかかります。そうなると、優秀な管理者をスカウトして くるのが早いのかというのが、悲しいかな、ある種の結論です。



Ⅳ- 5 優秀な管理職をスカウトしてくる

雇用契約で優秀な管理者を持ってきますと、月間五十数時間、年間二百数十日フルにその会社のことを考えてやってくれます。ならば、給料800万円から 1000万円払ってもペイします。なまじ会計士やコンサルタントが週に何日かだけしか来ないよりは、よほどいいのではないかと感じることがあります。


実際に、先ほどの私の経験の中で、こんな状況になってしまってどうするのというのが、優秀な管理者が入ると1年で目途が見えます。 優秀な管理者1名ないし2名入ってくると、会社の破綻状況が改善し、元の成長力を取り戻します。ということがありますので、我々プロフェッショナルという のは、そうした優秀な管理者のいいアドバイザーであるというのが、会社の資金負担をかけない上手な使い方なのかなあということを考えています。 ほかにこ んな解決策があるというのがありましたら、教えていただきたいですし、報酬をどう取るかというような末端の、しかし結果的には重要なスキームも含めて、こ んなふうにしていったらうまく回るんじゃない? というようなご提案がありましたら、後で一緒に検討してみたいというようなことを考えています。

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