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ベンチャー企業の経営管理

Ⅱ- 6 M&Aによる組織再構築

M&Aする側、買った側の会社の話です。コンピューター関連業界の会社で、もともとはデータエントリーから入って、機器販売やシステム要員の派遣をしていましたが、なかなか男気のある社長で、業績もしっかりしていて、無事店頭公開してやっていたところにメインバンクから同じ業界の救済型M&Aが持ち込まれました。立派な本社を建てて資金がショートしてしまったんです。そういう会社、あるいは機器販売の小売店、インコムとかステップとか倒産した会社がたくさんありますが、その同業の会社を救ったり、ソフトウェアの流通関連やパソコンソフト開発会社などを買収して一部を合併しました。立派な会社同士で合併しても社内の融和に苦労するわけですが、この場合も、買った側があまり威張ったらいけないと社長が社内に指示し、合併されてしまう会社の体制が治癒されないままに会社に持ち込まれた部分がありました。


そのため、不良在庫や滞留債権がぼこぼこに出てきまして、私が見ていたある段階で、在庫40億のうち動かない商品が20億ありました。そんな筈はないと会社の人は言いますが、2ヶ月ぐらいしてもう一回来ると、同じ数量が残っており、不思議なくらい動かないんです。



すみません、この部分は、詳しい人には、社名がわかりそうなので、中略です。



Ⅱ- 7 コンピュータ導入の遅れ

1番目の事例もコンピューター慣れしなかった会社でしたが、この場合は店頭登録完了していて、かつ台湾に生産子会社があり、その生産子会社の商品を売るために台湾支店があり、アメリカに販売子会社があるというところまで伸びていました。


しかし、さすがに海外展開までするとしんどくなってきて、なんとかしないといけないんじゃないですかと言っていましたが、これこれのスペックでこう組めば、これくらいの予算でこれだけの効果が出るでしょうというところまでまとめる経営管理者がいなかったんですね。決算短信に出すのがもう2ヶ月ギリギリの前の晩で、我々がチェックしに行く。当時、連結の短信は3ヶ月目でよかったわけですから、まず何はともあれ単体を固めて、3ヶ月目の頭で台湾へ出張し、生産子会社のほうを固めて連結組んで、連結短信出して。と同時に、有報も組まなければというドタバタの体制で、これではよくないという話はしていましたが、会社側で受けとめてくれる人がいないんです。経営管理者不在の体制。オーナー経営者は、お金にルーズだと会社は伸びないこともあって、基本的にお金に厳しい人が多いですから、きちんとした提案がない限り、コンピューターの導入はしません。たまたま新任部長が入り、その人がプログラム組めるという人だったので組んでくれまして、半年はバグに苦しみながらで苦労しつつ導入はできましたが、財務会計システム全般についてはまだ後回しということですから、その時点でも伝票回避がずっと続いていました。そのうちにM&Aされてしまい簡単に交代して、我々のほうから手が離れてしまいまし た。


やはり、50~60代の方ですと手書きの会計で育った方なので、何かのきっかけでコンピューターに触れる機会がないと、コンピュー ターはわからないから俺が部長でいる間はとりあえず勘弁してもらおうかという感じで後回しになってしまうのかなと思います。世代が代わってきているので、これからは大丈夫かと思いますが、システムマネーも含め、ファイリングのような経理マンとしての基礎ができていない経理マンが今、続々と増えています。コンピューターというのは入れてしまうと貸借合いますので、とりあえず入ってしまいますが、支出の内容がわからないからといって、とりあえず預金合わせるだけに仮払勘定を使う。しかし、伝票切る段階でわからないものは決算の時になったらもっとわからないです。会社の人がわからないものを我々が監査したってかわるわけないんです。このようなことが続きますと、どうにもならなくなってしまうということです。



Ⅱ- 8 過去における粉飾の後遺症

特殊業界として、健康食品を売っている会社です。そのような業界につきものの代理店方式で売っている会社ですが、ある時、薬事法違反の容疑で徹底捜査されて非常に厳しい状態に追い込まれました。そこで赤字を出してしまうと銀行からの融資が途絶えますから、必死に粉飾するわけです。


普通は、不良支出を開発費に上げるとか、架空の売掛を上げる、在庫を積み上げるという形で架空資産を作りますが、その会社の場合はそれでも足りず、代理店契約した際の代理店からの保証金も全部売上に上げるという形で簿外負債ができてきました。


この簿外負債というのは非常に監査が渋がります。不良資産は、中を見て資産の明細が勘定科目の一覧で出てきますから、紙の一覧を見ていって実体のないものは全部消すことで済みますが、簿外負債というのは、文字通り帳簿の外に負債はあるんですけど帳簿に乗っていないわけですから、会社の帳簿の中に突き合わせる資料がないということなんです。そのため、粉飾がスタートした時点からの売上勘定・雑収入勘定・すべての収益勘定を洗っていって、これは売上なのか粉飾なのか、全部積み上げていかないと簿外負債は出ません。ないしは関係する取引先に全部確認して、うちに対する債権はどれだけあるか聞くしかないという状況に追い込まれまるわけですが、なかなかそれができません。過大に報告されても恐いし、代理店というのはえてしてかなりの数が死ぬんです。保証金を支払って在庫も買ったが売り切れず、やはり代理店ビジネスで副業するのは難しいと諦めているところへ、うちへの資産いくらありますかとお 手紙が来たら、これしめたことかと請求に入ってきます。これだけ保証金払ったのだからすぐ返せと。寝た子を覚ますことはできないということもあって、自分でやった粉飾を自分で還元することもできなくなってしまう。


さらに悪いことには、経理部長が部下と愛人関係にあったとか、さらに現業部門と一緒に会社の乗っ取りを企んでいたということもあり、会社の業務は破綻したままだったため、上品な言い方をすると、我々としては契約を断らせていただきますということになりました。


ほかにも問題がありました。資金が足りないため、代理店に向けて持株会のような形で株を発行しましたが、数百ある代理店宛てに一度に株式発行したら有価証券届出書が必要ですが、そんなものやっていないわけです。これで公開するといっても、仮に粉飾を全部解明したとしても、法律違反を抱えた会社ということでまずいのかなと。代表社員も大蔵省と、交渉を直接したのか幹事証券を通してしたのか、やってはいましたが、粉飾のほうがどうにもならないだろうということで、お引き取りさせていただいたという事例です。粉飾というのも、手を染める時は安易ですが、解決するのは結構大変です。



Ⅱ- 9 会社の業態の特殊性

極めて特殊な業界向けの本を作る会社です。例を挙げますと、被差別部落の住民名簿、あるいは明治以来の国会議員名鑑といった本があります。議員や議員周辺の業界の人たちは、飾りとして買うかなという感じで買ったり、あるいは被差別部落の住民名簿というのは、建設業界で一部買ってくれたりするわけです。その一部買ってくれる人にだけ売っているならいいのですが、押し込み販売をするんです。本を送りつけて、それにもう請求書が入っている。払ってくれないと押しかけるという電話を入れたりすると、気の弱い会社は払ってくれるんです。1冊2万円から3万円する本ですが払ってくれる。


中には国会議員の名鑑のように、統計的な資料あるいは歴史的な資料としての意味を持つものもありますので、1冊10万円で全国の都道府県県庁所在地にあるような図書館と、一部の研究機関が買うというポリシーで作っているならば、ニッチな資料での会社ということで面白いと思ったんですが、やはり押し込み販売方式というのが直らないんです。直そうと思っても、当然押し込み販売で請求書が来ても知らないよと頬かむりするのがまともな会社なんですが、せめて引取先負担の宅急便で商品を送り返してくれればいやでも返品伝票を切れますが、本はもらったまま、請求書は無視するという対応をされてしまうと、売掛金の回収がいつまでたってもできなくなります。


そういう形でするなら公開はできませんし、より良い経理体制ということでも、試用販売みたいに回収基準を使うべきですよと言ったんですが、そこに会計処理の変更をするだけで債務超過になってしまう、と言ってそこへのふんぎりもつかず、ニッチマーケティングで生きるまっとうな歴史的資料を作る会社という本屋さんになってしまう気もしなかったのでしょう。


この場合には社長が亡くなってしまい、その翌年私が退職し、その後どうなったかは私もフォローしていません。公開準備なら契約をやめるだけですが、その会社は商法監査だったため、監査契約は簡単には切れませんでした。



Ⅱ- 10 大企業病的経営管理

某大手企業に部品を納入するメーカー。大手企業より部長クラスが出向や転籍でやって来ますが、得てして大企業の感覚しか持ち合わせておらず、我々から見ると規模の割にまずまずの従業員でも、「この会社にはまともな人材がいない」とこぼしていました。


原価計算システムを構築することになりましたが、経理部長が、「そのためには財務会計からのデータの流し込みが必要だから」と、AS400によるパッケージまで導入しました。しかし、あるべき論はわかっていても、実務上の使い勝手のような部分を知らないため、ほとんど使いたくないような帳簿システムになってしまいました。当然のことながら、管理の水準は向上しませんでした。原価計算も資料をたくさん入力し、たくさん出力して、経理部長はそれに追われるといったありさまです。設計段階での「もっとシンプルな設計でよい」という会計士側の意向はまったく無視されていたため、部長をフォローできる者がいませんでした。いかにしてこの部長を出向元に戻すかの画策が、会計士の直面する課題となったわけです。

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