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ベンチャー企業の経営管理

2 ベンチャー企業の経営管理・会計の破綻の事例

いかにしてベンチャー企業の経営管理・会計を破綻させないようにしなくてはいけないかというのがテーマですが、では、一体どのようにして破綻していくのでしょうか。



Ⅱ- 1 合併と新会計システムの導入

情報処理サービス業の、関西のほうから進出してきた会社です。データエントリーの部門があって、やがてデータエントリーする前後の業務処理を一括して請け負いましょうという部分が出てきて、それが出てくると、その業務に絡むソフトウェアも開発しましょうと開発部門が出てきて、とやっていきますと、会社がどんどん出てきますので、公開するにあたって、コンピューター業界ですとインテグレーションと言う会社の業務の統合をして、トータルサービスを提供する会社です、とまとめました。


それまで手書きに近い状態でやっていたんですが、売上高数十億くらいの会社が4~5社あったのを統合して、100億くらいの会社ができたということで、数十億ならそれでもなんとかなったんですが、合併となりますと部門別の試算表を出さないといけなくなりますから、コンピューターシステムを入れました。が、それ以前の会社間にあったいろいろな債権債務や取引高をきれいに整理できずに、期首残高が固まらないまま4月の月次の取り引きが始まって、5月が始まって6月が始まって。どこかで、とにかく月次はいいから期首残固めようと指示する管理者がいればよかったのですが、いなかったんですね。合併したはいいが、それ以前の各会社と合併後の各部門を統括して見ていくような人がいなかった。関西のほうの部門は関西だけでのんびりやっているし、東京のほうの会社は東京でやっていて、合併したら何が起きるかということを想定して、会社の業務のフローを変えなくてはいけなかったわけですが、これを変えないまま、とにかく請求書は出さなければいけないのでその業務はやらなくては、払いもしないわけにはいかないからやらなくては、という感じで1年間回ってしまいました。


ちょうどそのころ我々が契約し、まずは最初の予備調査かけましょうかと行った時に、決算が固まっていないことがわかったんです。期首残が入っていない帳簿というのは、みなさん見られたことはないと思いますが、結構おぞましいですね。吸収されて預金を相手会社の他部門の預金に吸い上げられた銀行口座の帳簿というのは、数千万や数億のマイナス残で、もらったほうはたいしたことないと思っていても、期首残が入っていないから実はいくらあるのかもわからない。会社のほうと会計士と一緒になって決算を2ヶ月間ほどでなんとかまとめたということですから、経営管理どころではないわけです。



Ⅱ- 2 資料の整理と仮勘定

飲食店のチェーンです。そうしますと店舗の数だけ店舗の売上金を入金する預金口座があるわけで、預金管理をするだけでも結構大変になります。店舗開発の子会社があったもので、出店しますということで地主さんに保証金を払い、店舗の建物を建ててもらって賃借するという場合には、先に保証金が出てきます。ということになりますと、本社から店舗開発の子会社にお金がドンと振り込まれて、そこから店舗開発の形で資金が使われるというような形で流れているわけですが、結局、各店舗からの預金残を吸い上げてそういう形でお金が流れるというのがよく見えなくなってしまう。


なぜかというと、当時の経理課長の管理がずさんで、整理ということができない。会社のほうも今年20億、翌年30億、その次の年が50億という感じでどんどん成長していくので、仕事の量が爆発的に増えていったのは確かですが、その時にSOSを出さずに、徹夜してでもなんとかこなすという状況に追い込まれてしまうんですね。我々が監査で伺ったりすると、無精髭生やしてボーッと出てくる。徹夜ですかと聞くと、「そうなんですよね」。引き出しの中にコップと歯ブラシ・歯磨きが入っていたりする。という感じでやっていきますと、本来管理者って何をしなくてはいけないかとか、振り返って考える 時間が精神的になくなってくるんだと思うんです。そうなると余計に追い込まれていくので、徹夜までしてこなしてボーッとした頭でまた翌日の仕事をする。そうなってくるとぐしゃぐしゃになってしまい、机の上が散らかり放題。忙しくて電話もどんどん入ってくるしということで、とりあえずもらった資料は机のどこかに積み上げる。これを繰り返しますとどうにもならなくなるんですね。


私の同僚が非常に面倒見のいい男というか、呆れ果ててとうとう手を出したというか、監査はいいから机の上を片しましょうと手伝いはじめたんです。そうしましたら、1~2ヶ月前に依頼していてなかなか見つからないと言っていた資料が出てきたり、先月の日付の小切手が出てきたり。その払いどうなっちゃったんですかね。1ヶ月も遅延して、その会社の信用問題はどうなったんだろうと不安になってしまうほど、そんなものが出てくるんです、実際に。


実は霞ヶ関のお役所へ行くと似たような光景を見ますが、恐らく東大を出られた頭なのでわーっと積み上がっていても管理できるんでしょう。下から10センチぐらいのところにはあの資料があったはずだというようなことがわかるのかもしれませんが、凡人が同じことをすると破綻します。野口悠紀雄教授が「超整理法」という本を出されましたが、大蔵省は狭いから上に積み上げていたが、一ツ橋の教授になったら一部屋もらえてゆとりができて横に積んだ。古いものから徐々に並んできて、引っ張り出したらすぐにわかるじゃないか、便利だねっていう話で、発想としては大蔵省の管理のままですが、あの管理を凡人がやっちゃいかんということです。ところが忙しくなって追い込まれてくると、どんどんそうなってしまうんですね。


それで、その時に「経理は整理」という格言を作ったんです。語呂合わせみたいなものですが、本当に経理というのは情報処理です。営業部から売上のデータが入ってきて、購買部から支払のデータが入ってくる。それぞれ、どれだけ売れてどれだけ支払って利益がどれだけ出たという情報をアウトプットしなければならない部門なんです。ということは、情報をいかにきれいに整理するかが大事です。コンピューターであればファイルやデータベースにきちんとデータを流し込むようなプログラムを組めばいい。手作業でやる部分はクリアフォルダーやファイル、バインダーなどを駆使して資料をきれいに整理すること、これが必要なんですね。パソコンでもフォルダっていうコンピューター用語が出てきますが、紙の発想ですね。同じことを手作業できちっとやらないと情報のアウトプットはできないんですが、そこの基礎を学ばないままに経理をやっている人がいる会社では、容易に破綻してしまう、ということです。



Ⅱ- 3 資料の管理と売掛金

売掛金の消し込みというのは結構大変です。たとえば、請求書を出しても、月末に納品して宅急便が着いたのは翌月の1日である場合には、1日に入ってきたものは検収の対象外ですから支払の対象にしませんという形で、購買管理がちゃんとできている会社と取引しますと、請求書の金額通りには払ってくれない ものです。そのほか、こちらから納めたものに欠品があったとか、品違いや不良のため返品食らったという場合にも、請求書の金額とずれが生じます。


ところが、自分の会社の営業マンがルーズで値引きしたのに値引伝票を起こさなかったり、返品受けたのに返品伝票を切らなかったりす ると、相手の会社は把握しているため、減らした後の金額でしか振り込みませんが、こちらの会社で値引や返品の伝票が起きていないため、なぜ満額払ってくれないのかというのが見えなくなってしまう。そうなると、とにかく納めたものを1件ずつ消し込んでいって、何が原因だったのかを把握しなくてはいけないわけ ですが、中小企業でずっと経理をやっていますと、売上伝票切るのは経理だろうという発想で固まっていますから、入金があったら銀行取引管理しているのは経理だから経理が入金の伝票を起こすだろうし、売掛金の回収も経理の仕事だという感じになって全部抱え込んでしまうんです。ところが、返品伝票の切り忘れとか値引の処理漏れは営業が絡まないと絶対にわからないです。

ということで、企業がそれなりの規模になってきて、自分の手作業では全部がわからなくなってきたら、必ず営業まで巻き込んで入金チェックをするという体制を作らないといけないんですが、伝票が絡んだら全部経理の仕事だということから頭が離れない場合が中小企業にはあります。そして、会社が大きくなってきて、いろいろな部署と協調してデータ処理をしなければならないという規模になっても抱え込んでいるので、売掛の滞留が起きてくる。経理が突っ込まないため、営業のほうでも処理漏れをそのまま放置されてはまずいんだということに気づかない放漫経営のまま放置されるんですね。


経理のなんたるかを知らない経理マンと、経理にどやされることを知らない営業マンということで、会社の売掛金がどんどん滞留していくという事例があります。
その意味では、どのようにチェックして伝票を切らなければいけないかという流れをマニュアル化してあげれば、学卒で入った事務スタッフでもアルバイトでもできるはずです。そういうふうに仕事を定型化してあげて、仕組みを作ることが大事なんです。



Ⅱ- 4 資料の管理と棚卸資産

最初にPentiumという名前のパソコンが出た時には、50MHzとか60MHzというものが出て、クロック数をどんどん引き上げて90、100と高性能になってきましたが、90、100が出たら50、60は売れませんし、166なんかが出たら100はもう売れません。あるいは売れても値段が激減 してしまうということになります。製品として機能するかではなく、売れるかどうかが商品ないしは在庫・部品の命ですが、そこの管理がなかったためにどんどん不良在庫が溜まったという事例です。


在庫管理をシビアにして、余ったら対処ではなく、余りそうな気配を感じたらその瞬間動くというくらいの敏速な対応をしないと、着実に不良在庫はできます。ちょっとでも溜まると、そのちょっとの在庫を割くために営業マンを使うというのは、売った満額以上にコストがかかることになり、非常に不効率で会社の損失となります。新製品を、右から左へ受注を受けた分だけ仕入れるという形にしたいのが会社の本望なのに、ちょっとでも滞留在庫ができると、その処分に追われてしまうことにならないように管理をしなければなりません。この事例では在庫管理表・年齢表みたいなものがなかったため、部品名を 見ながら、これはいつ仕入れたんですかと一個ずつ聞いていかないとわからなくなってしまっていました。



Ⅱ- 5 役員・従業員不正

パソコン業界に限らず、それなりの事情があれば苦しむというのが5番の事例、パチンコ周辺機器の会社における役員・従業員の不正です。最近、プリペイドカードでパチンコをするわけですね。パチンコの台の間、あるいはスロットマシーンの台間玉貸し機みたいのがあり、千円札を入れると玉かプリペイドカードが出ます。中に入ったお札のほうは、台の上をベルトコンベアーで流れて、島の一番端にある回収庫に納められる仕組みになっていて、その台間玉貸し機など お金を運んでいく流通機械の会社です。


公開準備で行っていましたが、在庫管理も売掛管理もない。そのため、原価計算管理システムを導入しはじめましたが、なかなかシステムが載りません。納めた製品に故障が出ますと、パチンコ屋でこの島の台は全部動かないというわけにいかなくて、夜でも電話がかかってくれば営業マンが飛んでいって部品を交換するので、部品をどんどん持ち出してしまい、直ったらほっとしたという感じで修理伝票を切らなかったりする。あるいは、会社の製品に若干問題があったりすると、「会社の製品が悪いから壊れたんだろう」と言われて修理伝票が切れなかったりする場合もあります。それでもとりあえず部品の出庫と帳尻を合わせるためには、ゼロ円で出荷伝票や売上伝票を切らなければいけない筈なんですが、そういう管理がないため在庫の受払表を作っても合わないんです。在庫と合わないものですから、営業マンも在庫管理システムを見ないで倉庫に行ってみて、物があれば持っていってしまう。見ないと確認できない在庫シス テムですから、資材部や購買部の人が付き添っていないと倉庫の中は見れないという仕組みにできず、会社の意識を変換しないとどうにもならないと社長とも話 していたところが、「うちの業界はそんなうるさいこと言っていたらだめなんだよ」と言われてしまいました。


これはどうしようもないと言いながらやっているうちに、得意先に1億数千万の売掛金の確認書を発送したら、そのお金はもう払いましたという手紙とともに、領収書のコピーが送られてきまして、結果的には販売担当役員がポケットに入れていた。パチンコの業界のセットは規模が大きく、動く 金がでかいわけです。
なぜそんな不正ができたかというと、本来は経理部で領収書に連番を振ったものを持っていて、営業マンのだれに何番から何番の領収書の束を渡したか控えてお いて一冊使い終わったら返してもらい、領収書を発行したものや書き損じは全部本紙も綴り込んで連番管理をして、異常な発行がされていないかチェックしてワンクールが終わるという管理をしなければならないわけですが、その管理もなかったということです。


こういう業界だからこそきちっとした管理が必要と、つくづく思ったわけですが、オーナー会社の話では、社長が納得してくれないとだめなので、我々の契約が解除されたという形になりました。お前らがうるさいこと言うからコストばかりかかって利益が上がらない、従業員も嫌気がさしている、と言われてしまい、社長が率先して啓蒙してくれないと会社は変わらないと言いたかったのですが、お客様の言うことには逆らえません。契約を切るというなら仕方がないでしょうと、社長が変わらない限り会社も変わらないと思いましたので、我々も引き下がりました。


社長の言うことがもし真実であるならば、最近アルゼとか環システムと、パチンコ関連業界は平和・SANKYOの後も続々と公開していますが、どこまできちんと管理できているのだろうかと疑問に思いますし、もし管理できているのだとすれば、その社長の考え方がやはり間違っていたということになるわけです。これを説得するのも経営管理のイロハのうちの一つなので、非常に苦心します。オーナー会社の社長ですからほとんど信念に近いものがありますので、それを崩していかなければならないわけです。

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