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ベンチャー企業の経営管理

Ⅲ 破綻を起こしやすい誘因について

このように述べてきたわけですが、そもそもなぜこんなに破綻してしまうのかという話でした。ベンチャー企業というのは、私なりの定義ですと、「急成長を志向する零細企業、ないしは急成長を志向するオーナー企業である」ということなので、中小企業の経営管理、それから逆に伸びた後の大企業・中堅企業の経営管理のようなものがちゃんとできていれば問題ないですが、急速にその両極端に進化していくから破綻してしまうのではないか、というのが私の想像です。



Ⅲ- 1 中小企業・零細企業の経営管理

では、なぜ零細企業のほうは破綻しないのか。たとえばの事例を二つ挙げますと、零細企業というのは全部社長の目が行き届きます。最近流行りのキャッシュフロー経営というのも、毎月給料支払い前、20日くらいの預金通帳の残高に先月の請求書発行額を加え、それから月末支払い予定の振込依頼書の合計金額と給料の額を引くと、今月の資金が足りる足りないはすぐに見えます。社長が通帳を抱え込んでいたり、社長が経理に行って通帳見せろと言えばすぐに見れますし、社長が面倒になってくると、経理の人にこういう集計表を作りなさいと言えば経理の人は作りますから、これができるんです。受注金額を乗せて粗利をかけ、そこから月々の経費を引くと、予想のキャッシュフローの数字が見えてきますし、そこから減価償却費を引くと当期の年度利益が出ます。売上が5億・10億という零細企業ですと、帳簿を見なくても、今期の売上はこれぐらいで利益はこれぐらいだというのが、誤差10%ほどで当たったりするんです。記帳代行や帳簿作成のアウトソーシングでやっている会計事務所の人間としましては、すげえなという感じがするくらい、現金の動きを見ていると読めてしまうということです。で、その程度の取引量だということがある。


建設業の事例では、建設業の経営管理というのは、工事契約書を作った段階でもう見えます。見積書を作る段階で材料費はこれくらい、外注の下請業者にこれだけ払うとこの建物できるなとわかる。だから、いくらで作りましょうという契約を結べるわけです。その契約書を結んだ段階で、これでいくら儲かったなというのが読める。あとは、工事が進んでいる段階で異常なトラブルや遅れ、仕様の変更で原価がかさんだということがない限り、予定通り積 算した時の利益が出てきます。積算した工事を何件やったかを足していくと今期の利益が読めてしまいますから、当然積算の段階で社長は口を出し、下請業者に納期遅れその他ないようにハッパかけます。全部社長が目を通していますから経営管理ができており、経理は絶対に破綻しません。受注管理がちゃんとできて、安くていい工事をするところに発注しますから、発注管理もできており、当然会社もうまく回るわけです。回らない場合は、社長が博打をやっているとか女がいるというパターンで、まともに経営すれば建設業というのはボロ儲けできる業界なわけです。宵越しの銭は持たないという人が今までやっていたから伸びない業者もあったわけですが、社長が酒飲まないなど真面目だという業者は、この5年間は別として、節税策に苦労したという苦労しか知らない社長ばかりだと、私は思っています。



Ⅲ- 2 大企業・中堅企業の経営管理

中小企業の管理はそうやって読めてしまうわけですが、それに対しての大企業・中堅企業はどうか。企業の取引件数も多く、従業員数も多いため、社長一人では面倒見切れませんが、給料計算は奥さんがやるというわけにはいかなくなり、必ず、営業部門で請求業務を行ったらその結果を経理に送り、入金についても入金の事実を経理が把握しても売掛の消し込みは自分たちではできないので、営業に回して営業に消し込みをさせ、その結果で入金伝票を起こすという形で業務の分担をします。資料を経理で抱え込んでしまうと営業の人が見えないですし、営業が抱え込んでいますと経理の人がチェックできないので、ファイリングもちゃんとしましょう、書棚にこの書類は必ずここにしまうんだというルールが大なり小なり、中には机の中に資料をしまい込んでいる会社もありますが、それでも中小企業以上には社長のもとから資料が各担当者に散って、かつ整理されています。整理されないと破綻してしまうわけですが、中堅企業ということはそれなりにちゃんと伸びてきたわけで、なんらかの形でそういう仕組みを作れる管理者がいたということなんです。仕組みというのはできてしまうとありがたいもので、硬直化しつつもルーチンで回っていきますから、中堅企業の管理というのはそれなりに安定しているわけです。


大企業ぐらいになりますと、総会屋に金を出しても社長が知らなかったというくらい業務分掌は進むわけですね。これは皮肉で言っているわけですが、法令違反するにあたって社長に報告ない会社は恐いです。私は知らなかったというNECにしても、あるいはいろいろな百貨店や総会屋に金出している会社にしても、恐らく知っていたが総務部あたりが責任をかぶっているつもりなんでしょうけれども、そんな言い訳しようが何しようが、職務分掌がきちっとできていないですね。法令違反するなら会社の意思として違反してほしいわけで、それができていないような会社を経営していたお前が悪いんだというのが、やはり社長責任だと思いますが、善悪はともかく、それくらいに職務分掌・職務権限の委譲ができているということが破綻しない安定性の原因になっています。



Ⅲ- 3 ベンチャー企業は中小企業から中堅企業へ駆け上がる

ベンチャーは、社長が全部把握している零細企業から、組織で管理を行う中堅企業へ短時間で進化しなければなりません。


従業員は部品ではありませんから、人情の問題、あるいは法律の問題からして、あなたは中小企業・零細企業のことしか知らないから明日からクビね、で、人材バンクから有能な人を引っ張ってくるというわけにいかないわけです。すると、社長も権限を委譲するという形で成長しなくてはなりませんし、零細企業しか知らない経理マン・営業マンも中堅企業の管理者へと成長していかなければなりません。誰か成長しきれない人が足を引っ張るということになるわけです。定型化すれば楽ですが、それができないために破綻する。


かくして仕訳伝票を切るだけの経理部長、予算達成のために外出するばかりの営業部長となってしまい、管理しなくなります。そうやって営業部からなぜ欠品しているんだ、納品できないじゃないかと文句言われるのがいやだから多めに在庫を持つ資材部ができ、とにかく売らなければというので月末に押し込んでもなんとか売るという営業部に対応するために、短期間で納品してくれる仕入先を一生懸命探す、そのかわり高い値段で買ってしまう購買部ができ。という形で、会社中に管理がなくなるという体制が発生します。ということではないかと、これまでの事例を経験して私は思っているわけです。

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