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佐久間裕幸の著作

新事業進出・ベンチャー支援制度を活用した事業展開

中央経済社「税務弘報」平成12年4月号

Ⅲ 支援制度の有効活用と事業展開の手法

これまで紹介してきた中小企業の各種支援法制とその優遇措置をいかに有効に活用し、事業展開に結びつけるかが本節のテーマであるが、実は、容易には 語れない側面がある。ベンチャーとしてある程度実績のある企業の場合その企業の現状に適した支援策を選択するのも容易であり、会社の状況が相応に知られて いる会社の場合や各法の認定事業者に対しては、施策についての案内や情報なども集まる傾向がある。それに対して、実績のない企業の場合、自社に適した支援 策を自ら探して、適用にまでこぎ着けなければならない。反面、平成10年10月の保証協会特別保証枠のように申請さえすれば必ず利用できる支援策もあり、 雇用助成金のように比較的容易に給付されるものもある。しっかり申請書類を作成すれば活用できる支援策は、おおいに活用すべきである。


こうした支援策の難易度の問題のほかに、資金調達に窮した企業が施策の求める要件の事業等を行うことにして支援策を活用するという問題がある。特に助成金 は、税金を投入しても支援したいほどの国策にかなった事業でなければ受領できないと考えるべきであるが、企業にしてみれば、事業に要する資金の1/2前後 をもらえるのであり、「行うことにして」への誘惑は少なくない。さらにこうした環境下で、助成金を受け取るべき企業以外にまで助成金獲得の助言を行い、支 給された助成金額の一定割合を成功報酬として受け取る助成金コンサルタントの出現といった事態まで考えると、根の深い問題である。

こうした問題から、支援制度の有効活用や事業展開のポイントは、個々の企業の実態により異なるため、詳述は困難である。よって、不十分ではあるが、支援策の有効活用と事業展開について感じる点のみ指摘してみたい。


(1) 必要な認定を受ける

新事業創出促進法、中小企業経営革新支援法あるいは中小企業創造活動促進法など支援策の前提として認定を受けなければならないものがある。それぞれに対象 企業の層や事業規模などが異なるため、難易度(という表現もおかしいが)に違いがある。各法の趣旨を考えた上で、認定申請を行う必要がある。


(2) 各種支援ツールを使い分ける

次に問題となるのは、各種支援策の類型のいずれを利用するかである。


① 融資・保証
比較的、適用を受けやすい支援策ではある。しかしながら、返済が必要であることはいうまでもない以上、実施する事業についての利益計画とそれに伴う資金計画を十分に吟味しておかないと、返済に苦しむことになる。


② 補助金・助成金
事業に要した資金の1/3から1/2を助成してもらえるため、企業にとってはうれしい支援策である。反面、税金を投入するほど公的な必然性のある事業でな ければ、支援対象とならないはずであり、襟を正した経営を求めたいものである。なお、補助金・助成金の多くは、対象事業で実際に支出した金額等の実績に対 して事後的に支給されるため、当初の支出についての資金調達は、別途考える必要がある。補助金の認定は受けたけれども、事業を行うための資金調達ができな いために、事業規模を縮小して実施し、縮小した規模の1/2の補助金しか受け取れなくなってしまったという話は、意外に見聞するところである。


③ 投資・ストックオプション
公的機関からの投資は、返還を要しない資金であるため、補助金同様、企業のニーズが高い支援策である。しかし、外部株主が誕生することでもあり、経営およ びディスクロージャーの適正性が求められることになる。また、投資を受けた以上、株式公開によるキャピタルゲインで還元するか、配当金で還元するといった 最終的な還元方針を固めておく必要がある。
ストックオプションもオーナー以外の役員や従業員にも株式を持つ機会を与えることになる以上、経営を第三者からチェックされることの覚悟が必要であるし、 株式公開やM&Aなどで高い株価を実現しなければ、また、実現する可能性を提示できなければ、モティベーションは高まらない。  同時に、経営者の安定持株比率の維持など資本政策の必要性が出てくるので、十分な検討と並行して実施すべきである。


④ 優遇税制
優遇税制の代表は、特別償却制度に代表される設備投資減税である。しかしながら、中小企業が設備投資を行う場合、初年度から利益が出ているとは限らないた め、特別償却を実施することで、赤字に転落したり、黒字は確保しても未処理損失を抱えたり(特別償却を利益処分方式で実施した場合)することが多い。これ が原因で金融機関からの融資が不可能になったのでは困るため、設備投資減税は中小企業にとって支援策としての誘因にならない場合があったのも事実である。
しかし、今般の支援策改正のなかで、繰越欠損金の繰越期間を7年に延長したり、欠損金の繰戻還付といった制度が生まれた。これらの制度は、経営成績のブレが激しい中小企業にとって、大きな支援になるのではないかと期待している。



Ⅳ まとめ

こうして説明すると、新事業進出・ベンチャー支援制度の活用は、十分な支援情報の収集と理解に尽きると思われる。昨今、インターネットによる各省庁の広報が充実してきており、 広域関東圏産業活性化センターによる支援策のメールニュース配信といったものも生まれてきている。従来からの情報収集手段に加え、こうしたツールも加えて支援情報を収集し、理解していくことが重要かと考える次第である。

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