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佐久間裕幸の著作

新事業進出・ベンチャー支援制度を活用した事業展開

中央経済社「税務弘報」平成12年4月号

Ⅱ 支援法の概略と有効活用法

1 中小企業事業活動活性化法の改正

中小企業基本法の改正を受けて、平成11年12月22日に中小企業の事業活動の活性化等のための中小企業関係法律の一部を改正する法律が公布され、以下のような政策が実現している。


(1)中小企業信用保険法および信用保証協会法の一部改正

中小企業金融の一層の円滑化、資金調達手段の多様化を図るため、社債(私募債)にかかる信用補完制度の整備、保証付き債権の譲渡の円滑化を目的とした改正が行われた。


<改正の概要>
① 一定の財務内容を有する中小企業者が限度額5億円の範囲内で発行する社債(私募債)について、信用保証協会が90%程度の部分保証を行い、当該保証債務について中小企業総合事業団が保険(填補率80%)を付す。
② 信用保証協会の保証付き債権(融資、私募債)が金融機関等(特定目的会社を含む)に譲渡された場合においても、信用保証の効果が及ぶとともに保険関係が存続すること。


(2) 中小企業金融公庫法等の一部改正

中小企業者の資金ニーズに対応した適格かつ機動的な資金供給を目的に、中小企業金融公庫および沖縄振興開発金融公庫の業務範囲の拡大が行われた。


<改正の概要>
中小企業金融公庫等の業務範囲を拡大し、貸付に加え無担保社債の取得を可能とすることにより、担保が乏しくとも成長が見込まれる技術志向型企業等の中小・ベンチャー企業のニーズに応じた資金供給制度を創設。


この改正により、中小企業金融公庫ベンチャー育成資金供給制度(仮称)が作られる。


① 対象企業
高い成長性の見込まれる新たな事業を行う中小企業者であって、以下の要件を満たすもの

  • 当該新事業が事業化されたときからおおむね7年以内
  • 成長性、新規性について、中小公庫におかれる外部専門家からなる評価チームの審査をパスするか、中小企業総合事業団の出資制度等の公的支援施策の対象となっていること。
  • ビジネスプランに基づく将来キャッシュフローおよび償還可能性について、中小公庫による金融審査をパスすること

② 資金使途
設備資金及び長期運転資金


③ 企業1社当たり限度額
貸付・社債の合計で6億円


④ 償還期間
貸付15年以内、社債7年以内


⑤ 社債にかかる条件

  • 無担保のワラント債とする。
  • 利率は、基準利率(長プラと同水準)を若干上回る利率とする。
  • 無担保等の高いリスクに対し、上記上乗せ金利とワラントの売却収入によって対応する。

(3) 中小企業近代化資金等助成法の一部改正

中小企業近代化資金等助成法は、中小企業の設備の近代化を図るため、国並びに都道府県が資金を供出し、設備近代化資金貸付と設備貸 与制度を行うものであるが、法律名を小規模企業者等設備導入資金助成法と改め、創業者および小規模企業者等のための設備資金無利子貸付制度、設備リース制 度を創設した。


<改正の概要>

① 創業者を新たに対象に追加し、38業種741設備の指定を原則廃止した。

② 無利子貸付を実施を貸与機関に一元化し、民間への業務委託を活用するなどで、手続の迅速化・効率化など、利便性を向上した。

③ 償還期間を5年から7年に延長した。


(4) 中小企業の創造的事業活動の促進に関する臨時措置法の一部改正

同法による認定会社が取締役又は使用人に対し新株引受権(ストックオプション)を与える場合の限度を従来の発行済株式総数の 1/10から1/5とした。ストックオプションは、中小企業が人材を獲得し、動機づける上での施策の1つであるが、これの付与限度が拡大されたことは、そ れだけ多くのストックオプション付与することが可能になり、認定事業者の人材獲得を容易にする効果が期待できる。


(5) その他の施策

① 中小企業技術革新制度の充実強化
中小企業技術革新制度(SBIR)は、中小企業の技術を活用して、新たな産業や雇用の創出を強力に進めるために、平成10年12月成立の新事業創出促進法 に基づき創設された制度である。現在、関係5省庁の40の補助金や委託費等をSBIRの特定補助金等に指定し、この交付を受けた中小企業者等に対し、事業 化支援策を措置しているが、これの支出目標額を約110億円として実施中である。


② 新規開業向け貸付等マル経融資制度の特別措置の延長
創業予定者や創業後まもない事業者に対するマル経融資制度の特別措置を平成13年3月末まで延長した。


③ 産業活力再生特別措置法による創業者・中小企業ベンチャー向け保証制度の概要
創業やベンチャー企業向けに対する産業活力再生特別措置法に基づく特別保証制度が存在するが、これを引き続き保証枠の適用を行うこととした。


④ 中小企業総合事業団によるベンチャーキャピタルへの出資
創業期、成長初期段階にあるベンチャー企業を発掘・育成する能力と体制を備えた投資事業組合に対し、中小企業総合事業団が出資を行えるが、これの出資金額 を平成11年度第二次補正予算において拡充した。現在、フューチャーベンチャーキャピタル、CSKベンチャー、日本アジア投資各社が組成する投資事業有限 責任組合に対して、出資が行われている。

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