新事業進出・ベンチャー支援制度を活用した事業展開
中央経済社「税務弘報」平成12年4月号
3 中小企業経営革新支援法
平成11年3月に制定された中小企業経営革新法は、中小企業近代化促進法に代わる法律として作られたものである。日本産業の大宗を占める中小企業自 らの積極的な経営革新により、日本経済全体の活力ある発展を牽引してもらうことを期待して作られ法律であり、今般の中小企業基本法の改正における政策理念 の転換の第一段として生まれたものといえる。
この法律に基づき、中小企業者等が自ら経営革新計画を作成し、行政庁(都道府県知事又は地方通産局長・国税局長等)の承認を受けた 場合には、債務保証・公的融資・税制・補助金等の支援措置を利用することができる。ここに経営革新計画とは、中小企業が、単独又は協同で、必要に応じ組合 や共同出資会社等を用いつつ、新商品の開発、生産、商品の新たな生産の方式の導入その他の事業活動を実施することを通じて、相当程度の経営の向上を図るこ とをいう(同法第4条)。この経営革新計画には、経営の向上を示す指標を盛り込むものとされている。具体的には、企業全体の付加価値額(営業利益+人件 費+減価償却費)または企業全体の従業員一人当たりの付加価値額のいずれかについて以下の伸び率を達成する目標を立てる必要がある。
計画期間計画期間 | 目標伸び率 |
---|---|
3年以下の計画 | 9%以上 |
4年計画 | 12%以上 |
5年計画 | 15%以上 |
経営革新計画の承認をうけた中小企業者等は、以下のような支援策を活用することができる。また、特定業種に属する商工組合等は、経営基盤強化計画(同法第10条)について通産大臣の承認を受けることでの支援策が用意されている。
(1) 中小企業経営革新事業費補助金
承認された計画にしたがって行う事業で、特に他の中小企業のモデルとなるような模範的なものに対して経費の一部補助が行われる。その対象事業は、新事業動向調査事業、新商品又は新技術の開発事業、販路開拓事業、人材養成事業とされている。
中小企業経営革新 対策費補助金 |
中小企業経営革新 支援対策費補助金 |
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補助率 | 1件当たり事業総額 | 補助率 | 1件当たり事業総額 | |
中小企業者 |
- | - | 1/2 | 約2000万円程度 |
組合等 | 1/2 | 約5千万円程度 | 2/3 | 約3000万円程度 |
(2) 低利融資制度
承認された計画にしたがって行う事業に必要な設備資金、長期運転資金等に対して低利融資制度が用意されている。
貸付対象 | 貸付利率(11年7月) | |
---|---|---|
先端産業育成特別融資 (中小企業金融公庫) |
設備資金 | 1.7% |
中小企業経営革新党支援貸付制度 (中小企業金融公庫、国民金融公庫等) |
設備資金 | 2.0% |
長期運転資金 | 2.0% |
(3) 税制措置
承認された計画にしたがって事業を行う場合、下記の特例措置により、事業開始の設備投資等に対する負担を軽減される。
① 設備投資減税 取得の場合、特別償却(取得価額の30%)又は税額控除(取得価額の7%)、リースの場合、リース費用総額の60%の7%の税額控除ができる。
② 欠損金繰戻還付 ある事業年度において欠損金が生じた場合、1年前までに遡って法人税の納付がある場合、その一部についての繰戻還付を請求できる。
③ 特別土地保有税非課税 特別土地保有税について、非課税措置がある。
④ 試験研究関連税制 試験研究費賦課金の任意償却、増加試験研究費の税額控除、私見研究用固定資産の圧縮基調を行うことができる。
(4) 高度化融資制度
計画の承認を受けた組合が、高度化融資を受けて工場の集団化や施設の共同化等を行う場合に長期無利子高度化融資等の優遇措置が講じられている。
(5) 中小企業信用保険法の特例
承認された計画にしたがって行う事業に必要な資金については、通常の保証限度額と同額の別枠保証が設定される。
(6) 中小企業近代化資金等助成法の特例
承認された計画にしたがって行う事業に必要な設備についての中小企業設備近代化資金制度の償還期間を5年から7年に延長する。
(7) 中小企業投資育成株式会社法の特例
承認された計画にしたがって事業を行う中小企業者については、資本金が1億円を超える場合であっても同社の出資を受けることができる。