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佐久間裕幸の著作

著作権取得の会計的問題

第一法規「JICPAジャーナル」98年4月号

4 プログラムの外部作成委託の場合の経理処理

プログラムの作成を外部に委託した場合、特に契約書上で著作権が委託者に移転することを定めるべきであり、従来5年償却していた経理処理は、著作権の取得との兼ね合いで矛盾があることは既述した。そこでこの点について私見を述べておきたい。


法人税基本通達8-1-7では、「他の者からソフトウェアの提供を受け、又は他の者に委託してソフトウェアを開発した場合における その提供を受けるため、又は委託するために用した費用は、令第14条第1項第9号ハ《役務の提供を受けるための権利金等》に規定する繰延資産に該当する」 としか規定していないため、著作権を取得したか否かには触れられていない。この通達は、昭和55年、すなわち著作権法でコンピュータプログラムを保護する ことが定められる以前に出されていることから当然の結果ではある。
この通達の制定後に著作権法の改正があり、それ以降、著作権が委託者に帰属するような契約をしなければ、委託者の目的は達成できなくなっているという取引 の実態を考えるならば、著作権を委託者が取得していても5年で全額を償却できると考えるのが自然である。契約書その他の中に作成委託料と著作権譲渡対価を 区分して記載し、前者についてのみ税務上の繰延資産として償却したり、著作権譲渡対価は無償であるとの記載を契約書等に入れるといった対策は不要であると 考える。このように考えれば、社歌・コマーシャルソングと同様、ソフトウェア開発費用について定めた本通達は、著作権について償却を認めない税務上の取扱 いの例外規定であると解される。


5 まとめにかえて

本稿の検討によれば、取引の実態において著作権の経済的価値の減少が認められたり、その支出を収益と対応させる必要が認められる場合には、税務上も著作権 の費用化を認めていることがわかる。一般的には著作権の価値は不変と考えられる小説、論文といった文章での著作物にしても雑誌に掲載される文章(例えば新 商品の紹介記事など)は、経済的価値を急速に減少させるであろう。現実に雑誌の出版社は執筆者に対して、「原稿料」という名目すなわち経理上は一時損金処 理を行っているのであり、実際は雑誌のレイアウトにあわせて若干の改変を行うから著作権の1つである翻案権の譲渡があったと考えられる。しかしながら、こ れを著作権として償却できなければ、出版社は経営が成り立たないから、当然に費用処理している。
こうして考えると、著作権は税務上は非減価償却資産であるという原則自体に問題があるともいえる。この原則があるがゆえに多くの事業者において、通達、業 界の慣行、通達の解釈(類推適用)によって費用化の途が探られている。経済のサービス化、ソフト化という流れが変わらない以上、税務当局の柔軟な対応が望 まれる。同時に我々職業会計人も、著作権法のような従来意識をしていない分野にも最低限の知識を習得しておく必要が出てきているのである。

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