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佐久間裕幸の著作

電子帳簿の保存要件

中央経済社「税務弘報」99年1月号
特集 電子帳簿の活用と税務調査への対応

1.帳簿、書類、電子取引の保存

7月1日より電子帳簿保存法が施行されているが、会計事務所あるいはその顧問先である中小企業の対応は、消極的なようだ。中小企業での元帳の薄さを 考えて「うち(あるいはうちの顧問先)には関係ない」と決めてかかっているのかもしれないが、より大きな要因は、帳簿書類の保存要件がきわめて厳しいもの であると解されていることではないだろうか。
しかし、多品種、小口かつ頻繁な納品をしている会社の納品書(控)や小売店、飲食店のレジロールのように特定の書類に絞って考えてみると電子保存のメリッ トは案外大きい場合がある。実際、ある大手のファーストフードでは、加盟しているフランチャイジーに対して、平成11年2月よりレジロールの電子保存をさ せるべく、昨年8月までに電子保存の申請書を提出させているという。また、EDI取引(Electronic Data Interchange)を行っていれば、7月1日以降の取引データについて保存義務が発生している。取引先との関係でオンラインの端末をおいている中小 企業は少なくない。電子取引については、「保存できる」ではなく、「保存しなければならない」である。このように電子帳簿は、特定の企業においては、必須 の制度となりつつある。本稿では、電子帳簿のネックの1つとも見られている電子帳簿の保存要件について詳説する。



2.保存要件の詳細

電子帳簿の保存要件は、帳簿と書類及び電子取引により違いがあり、帳簿の保存要件に比べ書類及び電子取引の保存要件は、緩和されている。しかし、条文上 は、帳簿の保存要件を読み替えるという形で規定されているため、理解しにくい印象がある。よって、以下、帳簿の保存要件、書類の保存要件、電子取引の保存 要件と分けて、説明していく。


(1) 帳簿の保存要件

施行規則によれば、帳簿の電磁的記録による備付け及び保存のために以下のような要件が定められている(電子帳簿保存法施行規則3①)。


①次に掲げる要件を満たす電子計算機処理システムを使用すること
イ 電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認することができること。
ロ 記録事項の入力をその業務の処理に係る通常の期間を経過した後に行った場合にはその事実を確認することができること。


②電磁的記録の記録事項と帳簿の記録事項との間において、相互にその関連性を確認することができるようにしておくこと。


③電磁的記録の備付け及び保存に併せて、次に掲げる書類の備付けを行うこと
イ 電子計算機処理システムの概要を記載した書類
ロ 電子計算機処理システムの開発に際して作成した書類
ハ 電子計算機処理システムの操作説明書

ニ 電磁的記録の備付け及び保存に関する事務手続を明らかにした書類


④電磁的記録の備付け及び保存をする場所に当該電磁的記録の電子計算機処理の用に供することができる電子計算機、プログラム、ディ スプレイ及びプリンタ並びにこれらの操作説明書を備え付け、当該電磁的記録をディスプレイの画面及び書面に、整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力 することができるようにしておくこと。


⑤電磁的記録の記録事項の検索をすることができる機能を確保しておくこと。
イ 取引年月日、勘定科目、取引金額その他の国税関係帳簿の種類に応じた主要な記録項目を検索の条件として設定できること。
ロ 日付又は金額にかかる記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること。
ハ 2以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定できること。


(2) 書類の保存要件

施行規則によれば、書類の電磁的記録による備付け及び保存のために以下のような要件が定められている(同施行規則3②により読み替え)。


①電磁的記録の備付け及び保存に併せて、次に掲げる書類の備付けを行うこと
イ 電子計算機処理システムの概要を記載した書類
ロ 電子計算機処理システムの開発に際して作成した書類
ハ 電子計算機処理システムの操作説明書
ニ 電磁的記録の備付け及び保存に関する事務手続を明らかにした書類


②電磁的記録の備付け及び保存をする場所に当該電磁的記録の電子計算機処理の用に供することができる電子計算機、プログラム、ディスプレイ及びプリンタ並 びにこれらの操作説明書を備え付け、当該電磁的記録をディスプレイの画面及び書面に、整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力することができるように しておくこと。


③電磁的記録の記録事項の検索をすることができる機能を確保しておくこと。
イ 取引年月日その他の日付けを検索の条件として設定することができること
ロ 日付けにかかる記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること。


(3) 電子取引の保存要件

取引情報の受領又は送付が書面により行われたとした場合に当該書面を保存するべき場所に保存するべき期間、以下の要件にしたがって保存しなければならない(同施行規則8①により読み替え)。
電磁的記録の備付け及び保存に併せて、次に掲げる書類の備付けを行うこと
イ 電子計算機処理システムの概要を記載した書類
ロ 電子計算機処理システムの開発に際して作成した書類
ハ 電子計算機処理システムの操作説明書
ニ 電磁的記録の備付け及び保存に関する事務手続を明らかにした書類
②電磁的記録の備付け及び保存をする場所に当該電磁的記録の電子計算機処理 の用に供することができる電子計算機、プログラム、ディスプレイ及びプリンタ並びにこれらの操作説明書を備え付け、当該電磁的記録をディスプレイの画面及 び書面に、整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力することができるようにしておくこと。
③電磁的記録の記録事項の検索をすることができる機能を確保しておくこと。
イ 取引年月日その他の日付けを検索の条件として設定することができること


(4) それぞれの保存要件について

上記(1)から(3)を要約すると、以下のようになる。


保存要件 帳簿 書類 電子取引
[1] 電子的記録事項の訂正又は削除の履歴の保存 - -
[2] 追加入力の履歴の保存 - -
[3] 帳簿間での相互関連性の確保 - -
[4] システムの概要書類の備付け
[5] 閲覧装置、操作説明書の備付け
[6] 取引年月日、勘定科目等による検索機能 △※ △※

* 書類、電子取引については、日付による検索のみ


このように書類及び電子取引についての保存義務は、帳簿ほど厳しくはない。本来、これらを電磁的記録により保存しようとすれば、利用者として必然的に必要となる要件であるともいえる。

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