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便利な資料室談話集

便利な資料室

勉強会「ベンチャーへの転職」の抄録

【第5回】 「会社を買い取って独立へ」

辻口:

(前号のあらすじ:辻口氏は、大和証券グループの中小ベンチャー企業専門人材紹介会社「日本インベストメント・ファイナンス(NIF)」で、ベンチャー企業の社長とも臆せず接して、同じ目線で人材を紹介するようになっていった…)

そうしているうち会社の収益も何となくトントンになってきたんですが、ある時親会社と話をしていた時、弾みで「わが社をどう考えているんですか?」という 話をしたんです。すると「君たちは戦略子会社として非常に重要だと考えているんだよ。ぜひひとつ頑張ってくれたまえ。」「いやそうじゃなくて、今後どうし たいとお考えなんですか?」「いや、だから大和グループの中でも非常に重要なんだ。」

結局、何を言っているんだか、さっぱりわからない。それで、ちょっとカッと来てしまって、弾みですね、「やめたるわい」って。僕がすぐにやめたら多分この 会社は存続できないと思うので、半年ぐらいはこの会社にいますからその間に後任を探して後任が来たら僕はやめますって。で、後任を探し始めたんです。とこ ろが、ベンチャー企業専門の紹介会社はうちしかないですから、適任がいないんです。

「うーん、困ったな」ということになって「じゃあ辻口、社長にしてやる」。当時34歳でしたから、「おまえは大和グループの最も若い社長だ。ありがたいと 思え、どうだ」という感じで言われました。それに対して、「でも孫会社の社長って、中間管理職じゃないですか」と言ったら、「え?じゃあお前はどうしたい んだ?」と聞かれたので、「買い取って独立したいんです」と申し上げたわけです。

NIFの役員陣からすると、「大和グループの傘下にあるからこそ食べていけるんだ。」という意識があって、私の言っている事は理解できなかったらしい (笑)。同じ言葉を話しながら宇宙人と話しているような感じでしょうか。NIFの方としても、どうしていいかわからない。そこで、じゃあ辻口の方で絵を描 いて提案して来い、という事になりました。

でも、テクニカルなことは私もわからないので、本屋に行って「よくわかるM&A」とか、「M&Aこれだけ入門」とかそういうのを何冊か買ってきて、読んだ んです(笑)。「のれん代って何だ?」とか。本を読んで意味はわかるんですが、うちにおけるのれんは何なんだということになるとサッパリ自信が無い。そこ で佐久間さんにこっそり御相談をしてみると、「のれんてあんたでしょう、辻口でしょう」と。登録者については、今まで投資をして集めてきたと言う点では資 産であるけれども、あなたがいなくなったら使えないんだから、それは強気で交渉していいんじゃないの? ということを心強く言っていただきました。

でも、1億5500万円の資本金を持つ大会社ですから、実際に幾らで買うかって感じですよね。で、1億5500万円といったって累損が1億4500万円も あるじゃないか。これを減資してきれいにしてくださいと。借金が4000万円さらにあったので、これも棒引きしてくださいと。「何をおまえばかなことを 言っているんだ」という話で結局全然話が進まないんです。
最終的に、350万円まで減資して累損を一掃した後、650万円を私が入れて65%の資本を取る、その代わり借金は今後の収益で返していくという、1番シ ンプルなスキームを提案してそれで了承されたんです。そんな感じなので、もともと独立志向があったわけでもないんです。瓢箪から駒と言うか、弾みといえば 弾みなんです。

マネジメント・バイ・アウトの交渉をしていた約3カ月間、1999年の末から2000年の2月までですが、月に約2回のペースで具合が悪くなって寝込んで いました。自分しか頼るものがない状態で、前例が全く無いことをやる、と言うのはヤッパリ大変な作業でした。それに会社としての業務は継続していますか ら、交渉だけに没頭できるわけじゃなく、自分で日々の売上げも上げないといけないんです。家に帰るともうヘロヘロで、かみさんから見ると多分相当すごい顔 つきをしていたと思います。しかも、新会社が儲かるかどうか自身が無かったので、社長になってから自分の年収を3分の2にしたんです。

「え?社長になったら普通給料って上がるんじゃないの?しかも年収が下がって忙しくなって、何でお父さんこんなことをやるの。」「うーん、そうやって改め て聞かれると難しいよな。」「しかも、退職金と貯金はたいて出しちゃって、一体全体何がいいの?」「うーん、そうだね。でも、信じてくださいよ。」とか何 とか言ってました(笑)。
最終的には「頑張ってね」というふうに言ってくれていたんですけれど、8月に実際にマネジメント・バイ・アウトを実施して掲載されたこの記事を見て、 「あ、お父さん、ちゃんと働いていたのね。あまりいつも帰りが遅いから浮気でもしていたのかと思った」(笑)。新聞に出てようやく、まあ、お父さんも働い ていたのねと。新聞に載るような、何か珍しいことをやっていたのねと理解してくれるのかなと。

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